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池田啓一医師

9.麻痺性股関節脱臼について

特に子供さんにおける痙性麻痺では、股関節脱臼が大きな問題の1つとなります。

股関節周囲の異常筋緊張とアンバランスにより股関節脱臼が起こりやすいのです。左右でいくと重度の四肢麻痺の方はより緊張の強い側に、立位・歩行が可能な状態の方であれば緊張の弱い支持性の強い側に脱臼が起こりやすい傾向があります。また間違った立位訓練により脱臼が起こることもあります。運動能力がまだそこまでに満たない子供さんに立位を取らせ、特にスタンディングテーブルなどに固定して長時間立たせておくようなリハビリを長期に渡って行うと股関節脱臼を起こす可能性が高くなります。もともと股関節は脚(足)が曲がった状態で安定するのですが、人間が二足立位・歩行を可能にしたのには大殿筋や中殿筋といったお尻のところにある筋肉の発達なのです。これらが効きにくい状態である脳性麻痺の子供に立位を強要すると、股関節は伸展といっていわゆる立った状態で股関節の圧力が高くなり、骨がなく押さえの効かない外側に向かおうとするのです。実際そういったリハビリを行っていた地域で両方の股関節脱臼が頻発していたことを目の当たりにしたことがあります。もしそういったリハビリを行うのであれば処方する医師・行う療法士がそういった危険性を承知して行う必要があると思います。