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池田啓一医師

11.側弯症について

大きな問題の1つに側弯症があります。背骨が左右に曲がり、それに加えて前後にも曲がりねじれも加わります。

側弯症の問題点として美容上の問題、胸の中にある心臓、肺といった臓器の機能障害、体全体の姿勢(寝ている状態、坐位の状態、立位の状態いずれにしても)の問題等挙げられます。

私も背中に対するOSSCSを行っていますが正直言って私は側弯症に対しては無力です。

OSSCSを行っても背骨の曲がり、側弯の角度的改善はまず得られません。いったん側弯が起こり進行し始めるとそれを改善することだけでなく、進行を止めることさえ難しいのです。しかしOSSCSを行い緊張を緩和することで呼吸や摂食、発語に良い影響がでることもあり、背部(背中や腰)に対するOSSCSは全く無意味であるということはありません。

もし角度的な改善を得ようとするならば骨を触るしか今のところありません。今日本で行われている骨を触る手術は、おおむね背骨を首から腰までを金属の棒を使用して矯正するものです。これを行えば確かに背中の曲がりはある程度矯正されますが、体全体が棒のような硬い体になり、手術侵襲(手術の大きさ:手術が複数回になることもあり、その時間も長く輸血も必要です)が大きく私はお勧めしていません。    

側弯症は近年、「胸郭不全症候群」という呼ばれ方をするようになっています。それは、ただ単に角度的にまっすぐにすればよいということではないことから言われるようになったものと思われます。胸郭には呼吸を行う肺という臓器があって、幼少の頃から肺胞といって小さな風船のような肺を構成する組織が育っていき大人の肺になるのですが、側弯症が小さな頃よりあると大きくなった頃に側弯を矯正しても肺胞が育っておらず、肺の機能としてはあまりよくならないと言われているのです。しかし骨を触る手術を成長期にある小さな子供に行うことは成長を妨げることになりよくありません。こういった問題も骨の手術にはあるのです。かと言って私がほかに方法を持っているわけでもないのです。それが私が側弯症に対して無力です、と言っている理由です。

今現在、私はOSSCSを行ってその後どうなるかは神のみぞ知る、といったスタンスを取っています。というかそれしか言えないのです。

最近側弯症に対する新しい治療法の取り組みがありますが、まだ日本では研究段階です。特に脳性麻痺の側弯症に対しては効果や予後がわかっておりません。したがって詳しい話しは伏せておきますが、もしこの方法が痙性麻痺の側弯症にも効果があり実際に行われるようになれば、かなり多くの方々が救われると私は信じています。